CUSTOM-MADE Telecaster Bass Neck – Tribute to Billy Sheehan “Wife”

Custom Order

はじめに

この度はご依頼を賜り、心より感謝申し上げます。Billy Sheehan “Wife”の文脈を踏まえ、単なる外観再現ではなく「なぜこの加工が音と演奏性に効くのか」まで設計意図を明示しながら仕上げました。選んでよかったと感じていただけるよう、一本の物語としてネックを構築しています。

ご要望

  • Fender純正ネックパーツをリフィニッシュ
  • R250 への指板R変更(フレットの除去、フレットなしの状態で納品)
  • Billy Sheehan “Wife” 風スキャロップ(いびつな手彫りニュアンス)
  • ポジションマーク大型化(Fender標準より大径)
  • ネックグリップ部分の塗装部分と剥がれた部分の境目のグラデーションを自然
  • 指板面クリア塗装(白っぽいニュアンス/ナット・フレットなし)
  • デカール貼付(お持ち込み/必要に応じて密着処理/エイジング加工)
  • ラッカー仕上げのレリック+ウェザーチェック
  • ネックヒール部分に当店のサイン
  • ペグの日焼け加工
参考にした画像
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こだわりのポイント

塗装剥がし及び木地調整(指板以外)

塗装剥がしを行い、木地調整として、塗装を行うために最も大切な作業です。ラッカーの密着性、膜厚、後年のエイジング表情はここで決まります。

Rとスキャロップの両立

R250はポジション移動と和音の接地感を整えます。スキャロップは“いびつさ”を意図し、不慣れな方が細工した様子を再現。

大型ドット

8~9mm 目安の大径マークを埋め込み、すこし黄ばんだラッカーを重ねることで、ビンテージ感を演出。必要に応じて微白濁処理で視認性を微調整。

レリックは「理由のある痕跡」

局所の摩耗・変色・当たり・ウェザーチェックを、実運用の因果に基づき配置。装飾ではなく履歴の翻訳として成立させています。

Process

1)診断・基準出し

既存膜厚/導管充填/段差の測定。後工程での割れ方・艶の収まりまで見据えて基準を設定。

2)塗装はがし及び木地調整(ネック外周:指板以外)

フレットを取り除き、塗装をはがし、木地の繊維方向と面の微起伏を均し、ラッカーが薄膜でものる下地を作成。
(公開表記)木地調整として、実際には剥離不要であるが塗装を行うために最も大切な作業です

3)指板R=R250

全面を均一に再成形。段差・うねりを矯正し、コード時の接地感とビブラートの安定を確保。

4)スキャロップ(“Wife”風)

左右非対称の深さ・端面R・立ち上がりいびつさをポジションごとに再現。

5)ポジションマーク大型化+透け視認塗装

既存ドットを取り除き、大径ドットを埋設

6)指板面クリア(白味ニュアンス)

透明ラッカーを薄膜多層でコントロール。白っぽさ木目の気配を共存。ナット・フレットは未装着。

7)外周クリア → レリック+ウェザーチェック

クリアのカラーを複数枚の画像から、平均化、画像が撮影された場所の照明、ホワイトバランスを想定し、黄ばみを決定。
温度変化を併用した自然なクラック誘発と、使用起因の摩耗配置。
(公開表記)ラッカー仕上げによるレリック加工+ウェザーチェック

8)デカール貼付

経年劣化加工。

Billy Sheehan “Wife”について

Billy Sheehan の象徴的 P-Bass “The Wife”は、スキャロップ指板デュアルアウトネック側に EB-0 系ピックアップ追加などの大胆な改造で知られ、その思想は Yamaha Attitude シリーズへと継承されました。Yamaha 公式は Attitude 30th を“The Wife に着想”と明言し、スキャロップ/デュアルアウトの起源として位置づけています。ヤマハ USA
ピックアップ面では DiMarzio と共同開発された Relentless 系列(Middle/Neck/PJ)が展開され、深い低域と実戦的なノイズ対策を特徴とする設計が公開情報から読み取れます。dimarzio.com+1
また、Sheehan 本人の発言として、“The Wife”にはオリジナルの Gibson EB-0 ピックアップデュアルアウト等の改造を加えてきたことがVintage Guitar のインタビューに記録されています。vintageguitar.com

Gallery

さいごに

ichimonzi のレリックは「理由のある痕跡」です。
木地→塗膜→痕跡という順序で“時間”を再構成することで、作り物ではない説得力を宿します。

ここからさらに物語の続きを紡いで下さることを願っています。


参考資料(公開可)

  • Yamaha “Attitude 30th” 公式ページ(The Wife への言及、スキャロップ/デュアルアウトの由来)ヤマハ USA
  • DiMarzio “Relentless” シリーズ(Middle/PJ の仕様・思想)dimarzio.com+1
  • Vintage Guitar:Billy Sheehan インタビュー(EB-0 ピックアップ/デュアルアウトの記述)vintageguitar.com

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