このたび、お客様からのご依頼により、”BLACK1″スタイルのギターを製作いたしました。
今回のご依頼はボディ単体での製作。ネックやパーツはお客様ご自身が用意されるとのことで、当店ではその“核”となるボディ部分に全力を注ぎました。
再現にあたっての背景とこだわり
BLACK1といえば、Fender Custom Shopの名工ジョン・クルーズによって2004年に製作されたジョン・メイヤー本人用の特別な1本。
その特徴は、ただのストラトキャスターでは決して到達できない「ヴィンテージとモダンの絶妙な交差点」にあります。
ichimonziでは、過去にBLACK1を再現した複数の事例もあり(参考ページはこちら)、その過程で得た知見や資料をもとに、今回もまた細部までこだわった再現を実現しました。
BLACK1についての詳しい解説はこちら(John Mayer Limited Edition BLACK1について)。
このモデルの奥にある文脈や仕様、サウンドキャラクターに至るまで丁寧に分析したうえで、現代の素材と技術を融合させながら、一本の木材に“あの空気”を吹き込みました。
加工内容と仕上げについて
- ボディ:お持ち込み
- フィニッシュ:ナイトブラックのハードレリック仕上げ
- エイジド処理:単なるダメージ加工ではなく、時間の経過が生んだ必然性を形にするよう心がけました。特にアームレストやバックの摩耗跡など、弾き込まれた楽器特有の「呼吸」を表現しています。
process
既存塗装の剥離
お預かりしたボディはすでに塗装済みのものでしたが、BLACK1特有の質感を再現するため、まずは表面の塗膜を完全に剥離。塗膜は、木地の呼吸を妨げるため、慎重に処理し、木肌の表情を引き出しました。
下地処理と木地調整
塗装剥離後のボディは、木材の傷みやざらつきが残る場合があるため、必要に応じて研磨と補修を行いました。また、経年変化を想定した微細な段差や、塗装の乗り方に差をつけるための表面処理も施しています。
ニトロセルロースラッカーによる再塗装
仕上げはニトロセルロースラッカーを使用。BLACK1特有の黒味を意識しました。
数層に分けてラッカーを吹き付け、乾燥と研磨を繰り返すことで、深みのある“時間を纏ったような”質感を演出しています。
レリック(エイジド)加工
実機写真とオリジナルの使用感を参考に、ナチュラルな摩耗や打痕を手作業で再現。演奏による癖や使用頻度の差が滲むようなリアリティのあるエイジングを心がけました。特にアームレストやバックの摩耗感は、BLACK1らしさを象徴するポイントとなっています。
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最後に
このギターは、プレイヤーがこれから育てていくことで完成に近づいていくものだと、私たちは考えています。
BLACK1に憧れるすべての方にとって、“理想の入口”となるような、そんな一本になっていれば幸いです。
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