CUSTOM-MADE ’70s Stratocaster Neck Refinish & Relic

Custom Order

【Neck Refinish / Subtle Fingerboard Wear / Normal Weather Check】

本ページでは、ビンテージらしい鳴りと佇まいを目指して行ったネックのリフィニッシュ&レリック加工の事例をご紹介します。
お客様のリクエストは「ヒールの隙間解消(全体の薄削り)」「指板の減りは控えめ」「ヘッド表ロゴは残す」「トーンの統一」。加えて、ネックポケットの左右の“遊び”は現状を活かすという設計判断を共有のうえ進行しました。



ご要望

  • ネックポケット:左右の遊びはあえて現状維持(脱着性と季節変動の許容域を優先)
  • ネックヒール:ポケット前縁で想定より薄いクリアランス全面のスキム(薄削り)で整合
  • 指板表情:支給参考「指板1」画像のニュアンスを基準に、減りは一段控えめ
  • 意匠ヘッド正面ロゴを残し、側面・裏面・指板の“新品的”な違和感を自然なビンテージ感へ
  • フレット交換:ジャンボフレットへ交換
  • 全体トーン:ヘッド表と他面の色味差を吸収し、飴色(アンバー)と日焼け感を統一

設計方針(背景と判断)

  • ポケット左右の遊びを残す理由
    60s期の実機でも見られる“わずかな遊び”は、乾湿差による材の動きを受け止め、サービス性(脱着/調整の再現性)にも寄与します。今回はヒール側の接触面品質を上げることで、鳴りとピッチの安定を優先しました。
  • ヒール全面スキムの意味
    一点当たりの圧力が偏らないよう、テーパーを含む面全体の当たりを設計。これにより局所的な応力や傾きを避け、サステインとレスポンスのバランスを最適化。
  • 仕上げのトーン統一
    既存のヘッド表ロゴは保存しつつ、側面/裏面/指板をニトロセルロース主体で再構成。日焼け/飴色の階調と通常ウェザーチェックで、“年代相応に休ませた”質感へ寄せています。

Process

  • 受入・計測:ヒール部クリアランス、指板R、ネック反り/ねじれを測定。
  • 分解・前処理:マスキング計画(ロゴ保護、シリアル保護)。
  • 塗膜剥離(指板除く):熱/薬剤/機械を併用し最小侵襲で下地を温存。
  • ヒール全面スキム:面圧が均一になるよう当たり面を再構築
  • フレット交換
  • 日焼け下地:段差焼けの濃淡を部位別に設計
  • 下塗り〜クリア(ニトロ):薄膜多層。乾燥→研磨を反復で平滑
  • アンバー調合飴色の温度感を微調整(ヘッド表との整合優先)。
  • レリック(控えめ)指板の減りは基準画像より一段抑制。タッチ位置の“ツヤ抜け/艶ダレ”を中心に。
  • ウェザーチェック(通常):急冷温変+手彫り補助で経年方向を調整。
  • フレット/ナット/セットアップ:後述のWork Sheetに準拠。
  • 最終検査:ピッチ、減衰、開放〜高ポジの音像と手触りを総合評価

Work Sheet(実施項目)

  • ネック塗装剥離(指板除く)
  • クリア仕上げ(指板除く)
  • レリック加工(飴色/日焼け含む)
  • ウェザーチェック:通常
  • 指板調整(塗装剥離込み)フレット交換ミディアムジャンボ
  • ナット新作(無漂白牛骨オイル漬け / 弦間・高さをワンオフ調整)
  • ヒール補修/全面スキム(ポケット整合優先)
  • ネックプレートのヴィンテージ加工
  • 組立・総合セットアップ(仕込み角、電装、トラスロッド、弦高、オクターブ、グリスアップ)

Setup Data(参考値)

  • Relief:0.10–0.20 mm(12F基準)
  • 弦高(12F):1弦側 1.6–1.7 mm / 6弦側 1.8–1.9 mm
  • ナット溝高:開放ビビり回避の最小値に調整
  • オクターブ:実運指圧で追い込み、高ポジの合成も確認

※個体差により最良値は微調整します。


Gallery


さいごに

本件は、“遊びは残し、当たりを磨く”というビンテージ的合理性を軸に、演奏性とサウンド、時間感覚の同居を目指しました。
ロゴを守りつつトーンを整え、控えめな指板の減りで語りすぎない余白を残しています。長い時間の中で自然に育っていく一本として、ここから先の変化もぜひお愉しみください。

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