1. クイックサマリー(まずは要点)
比較軸 | 通常仕様 | マスタービルド仕様(推奨) |
---|---|---|
ゴール | 高品質なヴィンテージ感を効率よく実現 | 理想像の“微差”と将来の経年表情まで設計 |
打合せ | 必要最小限(初期+最終) | 段階的レビュー(ラフ / 中間 / 最終) |
木材選定 | 音質に影響しない安定材 | 粒立ち・重量・タップ音で“鳴り”を狙い分け |
塗装/研磨 | 主要工程を効率化 | 層厚・乾燥サイクル・研磨回数を個体最適化 |
ウェザーチェック | 温度差中心=自然なランダム性 | 温湿度+応力制御で割れ方向/密度をデザイン |
エイジング表現 | 代表的摩耗と退色を再現 | 層ごとの色焼け / 艶勾配 / 下地覗きまで演出 |
キャラペイント | 1案+軽微修正 | 複数案→色/質感微調整→経年フェード設計 |
サウンド調整 | 標準セットアップ | 重量/重心/接合圧を追い込みレスポンス設計 |
ドキュメント | 完成&主要途中写真 | 全工程ログ+調整値+推奨メンテシート |
将来の育ち | 自然任せ | 2〜5年後の艶・割れ進行を“仕込み” |
納期 | 標準 | +1〜2週間(工程追加分) |
推奨対象 | コストと完成度のバランス重視 | “唯一無二”と資産性を求める方 |
2. 仕様のポイント解説
2-1 木材選定
- 通常: 音響的欠点を避けた安定グレード(重量・剛性のバランス重視)。
- MB: 年輪幅・比重・導管密度・タップ音を評価し、狙うアタック/サスティン特性へ最適化。含水バランスも調整して内部応力を抜いた状態で加工開始。
2-2 接合と鳴り
- 通常: 規格精度でジョイント面を平面仕上げ。
- MB: 共鳴ポイント(タッピング)を確認し、ネックポケット面圧とねじトルクを微調整→立ち上がりとサスティンを最大化。
2-3 塗装 / 研磨プロセス
要素 | 通常 | マスタービルド |
シーラー | 標準回数 | 吸い込み量で可変調整(過剰加重回避) |
カラー層 | 均一吹付 | 層ごとに彩度/フェード差を仕込み |
クリア層 | 標準厚 | μm単位で層厚設計(鳴りと将来割れ制御) |
乾燥 | 一定管理 | サイクル変調で内部応力コントロール |
研磨 | 主要番手 | 中間&仕上げ番手を追加し艶グラデ演出 |
2-4 ウェザーチェック(塗膜クラック)
- 通常: 温度差で自然発生→一本ごとの偶然性を味として活かす。
- MB: 温度・湿度・表裏差+曲げ応力を組み合わせ、割れの“方向・間隔・細かさ”を配置設計。説得力のある経年ストーリーを再現。
2-5 エイジング表現
- 通常: 摩耗/チップ/退色など主要部位を網羅。
- MB: 下層色の段階差、半艶と艶残りの混在、ピッキング痕の深度差、金属酸化の質感分離(曇り・点腐食)まで多層的。
2-6 キャラクターペイント
項目 | 通常 | マスタービルド |
方向性決定 | 初期ヒアリング | コンセプト定義+ムードボード |
ラフ案 | 1案(微修正) | 2〜3案→選択→細部調整 |
経年表情 | 全体トーン統一 | 線の擦れ・下色覗き・部分フェード |
承認ステップ | 最終画像1回 | 最終画像1回 |
2-7 サウンド面
- 通常: 標準セットアップ(弦高・オクターブ・トラス)+基本共鳴チェック。
- MB: 重量/重心計測→弦振幅観察→サドル/ネック接合面仕上げ微調整。
2-8 ドキュメント / メンテ情報
項目 | 通常 | マスタービルド |
途中写真 | 主要全工程(木地→完成) | 主要全工程(木地→完成) |
記録 | セットアップ値 | セットアップ値 |
メンテ案内 | 調整ガイド & ラッカー塗装の取り扱い | 調整ガイド & ラッカー塗装の取り扱い |
3. どちらが向いているか(判断早見)
お考え | 適した仕様 | 理由 |
まず高品質な一本をコスト効率良く | 通常 | 主要なヴィンテージ要素を十分再現 |
“決定版”として細部と将来の表情まで拘りたい | MB | 解像度と将来設計が可能 |
初のカスタムで手順をシンプルに | 通常 | 打合せ負荷が少ない |
コレクションの中心・資産性重視 | MB | 工程ログと唯一性の証跡 |
経年変化の出方をコントロールしたい | MB | 応力仕込み & 層設計 |
ある程度お任せで早く仕上げたい | 通常 | 標準フローでスムーズ |