overview
ご依頼を頂きまして誠にありがとうございます。
今回は Fender Jazz Bass のリフィニッシュ&ヘヴィーレリックを、Master Build 仕様として製作しました。
お客様が求められたのは、単なる「薄い青」ではなく、
日焼けしたブルー/日焼け部が剥がれて覗く深い青/それぞれが混ざり合うLake Placid Blueのグラデーション。
さらに、光を当てたときに“キラッ”と反応する、繊細なメタリック粒子感まで含めた再現です。
こだわったポイント
1) Lake Placid Blueの色合い|日焼け・深い青・グラデーション
LPBは「均一な青」にすると一気に作り物に見えます。
経年で起こる色のムラや、焼けの入り方、剥がれた部分の“青の濃さ”まで含めて、自然なばらつきを丁寧に作り込みました。
Lake Placid Blue の魅力は、経年によって起こる色のばらつきと、
剥がれ・黄ばみ・くすみが作る層の奥行きにあります。
今回の狙いは、
- 日焼けで白っぽく抜けたブルー
- 剥がれた箇所に現れる深い青
- その境界に生まれる自然なグラデーション
これらが、演奏で触れられる位置関係の中で説得力を持つこと。
写真だけでなく、手に取った時の「本物らしさ」を優先して設計しました。
2) メタリック粒子|3種類のパウダーを調合
お客様とのヒアリングで得たイメージを再現するために、3種類のメタリックパウダーを調合。
粒子の大きさ・反射の仕方・色の転び方を整え、
「ギラつきすぎないのに、光で反応する」理想のメタリック感を狙いました。
3) ウェザーチェック|不自然になりがちな“割れ”を自然に
ウェザーチェックは強く入れれば良いわけではなく、
塗膜の層構成・硬化状態・入り方の方向性が揃わないと、途端に嘘っぽくなります。
今回は、自然に発生するクラックの表情に寄せるために、
チェックの「密度」「方向」「深さ」のバランスを設計し、意図を隠す加工を行っています。
4) 剥がれた木部の“木目の出方”
塗装が剥がれた部分は、木肌の出方ひとつで説得力が変わります。
木目の表情、摩耗の角、手触りの移行を整え、
「塗膜→木部」への繋がりが自然に見えるよう追い込みました。
5) ネック|日焼け跡だけでなく“日焼け具合”まで
ネックは日焼け跡を作るだけでは足りません。
焼けを強めると起こりがちな塗装の濁りを避けるため、
透明感を保ったまま深みを出す手法で、日焼けの濃淡を作っています。
さらに、ネックグリップ部の自然な塗装剥げも再現。
演奏で触れる箇所の摩耗は、視覚だけでなく触感としても重要です。
6) 写真に写りにくい“塗膜ダメージの質感”
小さな打痕・擦れ・くすみの粒度など、写真では伝わりにくい部分こそ、実物の印象を決定づけます。
塗膜面のダメージや経年の雰囲気まで含め、全体が「まとまる」ように調整しました。
7) キャビティ内・パーツ下|見えない場所にも“経年”
キャビティ内部やパーツ下は、完成後に見えにくい部分ですが、
ここに痕跡がないと「作った感」が残ります。
分解時に見える箇所まで含めて、経年を感じる加工を施しています。
8) 配線部|余分な半田の除去(信頼性と整備性)
分解に伴い配線部を確認したところ、整備性を阻害する余分な半田が見られたため、丁寧に除去しました。
過剰な半田は、接点の状態確認を難しくしたり、場合によってはショートや接触不良の原因になったり、将来的なメンテナンス性も落とします。
当店では、音だけでなく長く安定して使える状態も重視しています。
9) キャビティの銅板処理|痕跡を残さないために整える
以前の工程で、ノイズ対策の銅板が残ったまま作業されていた箇所がありました。
今回は銅板をきれいに取り除き、その下に残っていた旧塗装も除去しています。
こうした部分は、後から見るとリフィニッシュの痕跡として残りやすいため、可能な限り整えて仕上げています。
(※他店様の是非ではなく、当店の仕上げ方針としての対応です。)
10) 金属パーツ|適度な曇りと、わずかなサビ
金属はやり過ぎると「汚れ」に見えます。
適度な曇りと、わずかな赤サビのニュアンスで、時間の質感を再現しました。
11) ミントグリーンPG|“濃すぎ問題”を解決する染め加工
市販のミントグリーンは、個体によっては濃く見えがちです。
そこで今回は、白いピックガードをグリーンに染め、微妙なムラとグラデーションを作りました。背面も加工し、説得力を上げています。
「均一に塗った緑」ではなく、経年で“そうなった”緑に近づけています。
build process|製作過程(工程の流れ)
1) 受領・状態確認(現状の痕跡を把握)
まずは分解前に、現状の塗膜・摩耗・金属の状態を確認し、写真とメモで記録します。
「どこに時間が乗っているか」を読み取り、最終的なエイジング設計に反映します。


2) 分解・パーツ点検(後戻りのない準備)
ボディ/ネック/パーツを分解し、組み戻し精度に影響する箇所(ネジ山、配線、接点)を点検します。
この段階で、仕上げ後に見える可能性のある「不自然な痕跡」を潰しておきます。
3) 配線まわりの整備(余分な半田の除去)
分解のために必要な配線作業では、余分な半田を除去し、接点を整えました。
過剰な半田は、将来的なメンテナンス性を落とすだけでなく、状況によっては接触不良やショートのリスクにも繋がります。
当店は仕上げだけでなく「長く安定して使える状態」も重視します。
4) キャビティ内の整理(リフィニッシュの痕跡を残しにくく)
前回工程の影響で、キャビティ内の銅板が残ったままの箇所がありました。
今回は銅板をきれいに取り除き、その下に残っていた旧塗装も除去しています。
※他店様の是非ではなく、当店の方針として「痕跡を可能な限り減らす」ための処置です。
5) 旧塗装の剥離(下地から作り直す)
当店のビンテージ加工は、塗装表面だけを変えるのではなく、下地から再構成します。
ここでの“整え方”が、後のチェックや剥がれの自然さに直結します。


6) 下地づくり(層の設計)
下地は、LPBの「白っぽさ」と「深い青」が共存するための土台になります。
色の抜け方、くすみの乗り方、剥がれの説得力まで、下地の段階で設計します。
7) メタリック層(3種パウダー調合)
お客様から伺ったイメージを再現するために、3種類のメタリックパウダーを調合。
粒子の大きさ・反射の仕方・色の転び方を整え、
「ギラつきすぎないのに、光で反応する」理想の粒子感へ近づけました。
8) カラーリング(焼けた青/深い青/グラデーション)
LPBは均一にすると嘘っぽくなるため、
経年による色のばらつき、焼けの入り方、剥がれ箇所の“青の濃さ”まで含めて調整します。
9) クリアコート→乾燥→研磨(ラッカーは“層”で完成する)
ラッカーは、下地→シーラー→カラー→クリアまで、12回以上の塗布を重ね、
各層で乾燥と研磨を挟むことで、独特のエナメル感と奥行きが生まれます。
この工程を詰めると、艶や安定性、経年表現の自然さに影響するため、丁寧に進めました。
10) エイジング(黄ばみ・くすみ・チェック・剥がれ)
最後に、黄ばみやくすみの位置、打痕、剥がれ、ウェザーチェックを統合し、
「時間が積み重なったように見える」表情へ落とし込みます。
写真に写りにくい塗膜面のダメージも含めて、全体がまとまるように調整しました。


11) ネックのエイジング(焼けの濃淡と透明感)
ネックは日焼け跡だけでなく、焼けの濃淡にこだわりました。
焼けを強めると起こりがちな塗装の濁りを避ける方法で、透明感を保ったまま深みを出しています。
グリップ部の自然な塗装剥げも再現しました。



12) ピックガード/金属パーツ(全体の整合)
- 金属パーツは、適度な曇り+若干のサビを再現。
- ミントグリーンは市販品だと濃くなりがちなため、白のピックガードをグリーンに染色。
染めることで微妙なムラやグラデーションが作れ、説得力が増します(背面も加工)。



13) 組み上げ・最終調整(プレイヤービリティ)
最後に組み上げと点検を行い、外観だけでなく「弾ける状態」で完成させます。
仕上がり全体の統一感は、ここで決まります。
gallery
さいごに
ichimonzi のレリックは「派手さ」ではなく、時間の説得力を組み立てる作業です。
塗膜の層、メタリックの粒子、黄ばみ・くすみの位置、そして木部の表情。
それらが矛盾なく繋がったとき、写真よりも実物が強く語り始めます。
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同様の Lake Placid Blue/メタリックカラーのリフィニッシュ、また Master Build 仕様のご相談も承っております。
「理想の参考画像」「色味の方向性」「剥がれ位置の好み」など、お気軽にお知らせください。



































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