リメイク加工の仕様とグレード

Tips

はじめに

ichimonzi 工房でのリメイク加工の仕様とグレードについて、加工の内容や、方法、作業時間、どれくらいの技術が必要になるのかなどについてまとめました。

ボディー塗装

ニトロセルロースラッカー塗装

ニトロセルロースラッカー塗装は、高級ギターの塗装として多く利用され、薄い塗装膜が特徴
で、木材を完全に密閉することはなく、木、本来の状態を保つ事が可能です。
しかし、その工程は複雑で大量生産が難しく、非常に薄い塗膜を時間をかけて、何度も重ね塗り
しなければなりません。
塗膜乾燥時には、表面からのみ揮発し硬化し、一度に厚く塗装すると、ひび割れが発生するためです。その工程は、

1、下塗りにプライマー(主要素はニトロセルロース)を2回
2、中塗りに素地調整としてサンディングシーラー(主要素はニトロセルロース)を4回
3、上塗りに顔料(主要素はニトロセルロース)を2回
4、仕上げにクリア塗装(主要素はニトロセルロース)を3回

それぞれの工程の間に塗膜を研磨し平滑にしなければなりません。この様に多くの工程が必要ですが、塗膜は薄く、仕上がりは高い透明度で、木肌が鮮明に出ます。


仕上がりの違いにより「ソリッドスケルトン TYPE1スケルトン TYPE23タイプがあります。

作業時間はそれぞれほぼ同じで、乾燥時間を除くと9時間程度、そのほとんどは下地処理や研磨作業が占めます。
作業内容は単純そのものですが、下地処理、塗布、研磨にはある程度の経験が必要になります。
丁寧な下地作りや研磨処理を経て美しい仕上がりになるでしょう。

ニトロセルロースラッカーの成分

下塗りプライマー成分
 ニトロセルロース、合成樹脂(ビニル)
中塗り剤、サンディングシーラーの成分
 ニトロセルロース、合成樹脂(アルキド)
上塗り剤、ラッカー
 ニトロセルロース、合成樹脂

ソリッド

ニトロセルロースラッカーによる塗りつぶし塗装です。
木目の薄い木材やシンプルに塗りつぶしたい場合の塗装方法

スケルトン TYPE1

ニトロセルロースラッカーによる木目を生かした塗装です。
上塗り剤にクリアラッカーを使用します。

スケルトン TYPE2

ニトロセルロースラッカーによる木目を生かした塗装です。
上塗り剤に有色のラッカーを使用します。ソリッドとスケルトンTYPE1との中間。

オーバーラッカー塗装

劣化した塗装面を薄く削りニトロセルロースラッカーにより塗装面をコートします。

ネックの塗装

ニトロセルロースラッカー塗装

下塗り、上塗り全てをニトロセルロースラッカーを用いて塗装する事で、木材の持つ特性を最大限に引き出します。
作業時間は、乾燥時間を除くと4時間程度、そのほとんどは下地処理や研磨作業が占めます。
作業内容は単純そのものですが、下地処理、塗布、研磨にはある程度の経験が必要になります。

ビンテージ仕上げ

ビンテージ風にペイントし、上塗り剤にニトロセルロースラッカークリアを使用します。

レリック加工

レリック加工において大切なこと

レリック加工において大切なことは何でしょうか。

有名カスタムショップの作品は、一見劣化したギターに見えますが、実際手に取ると、良く見る「単に傷をつけられただけの新しいギター」とはまったく違う事が解るでしょう。


では、何が違うのでしょうか。それは目を閉じて演奏すると、簡単に気付く事ができるはずです。

見た目は汚いギターですが、弾き心地は新品そのもの。
もちろん、それだけではなく、塗装としての本来の機能を保ち、パーツの操作性についてもパーフェクトです。
しかも、レリック加工にもかかわらず、そこには高級感が存在します。

大切な事は、長きにわたり大切に使われてきた風合いを再現する事にあります。

ボディーレリック加工

マスキングによるはく離

予め塗装をはがす部分にマスキングをし、塗装を施します。
複雑な工程を経ることで、長きにわたり大切に使い込んだ風合いを再現します。

レリック加工用に工程を省いた塗装ではなく、通常の塗装と同等以上の工程を経た、極薄ラッカー塗装には高級感があります。

作業時間はラッカー塗装工程も含めて、約11時間程度
技術的には、ある程度の経験が必要となり、ニトロセルロースラッカー塗装と同じです。

スクレーパーによるはく離

塗装面をスクレーパではがします。
短時間で出来ますが、塗装の機能を失います。
こちらの方法はあまりおすすめではありません。

一見、こちらの方法はマスキングによるはく離と仕上がりが同じように見えますが手に取った時の質感がまったく異質のものです。
マスキングによるはく離をお勧めします。

作業時間は1時間程度、技術的にも非常に簡単です。
しかし、仕上がりはマスキングによるはく離のものには到底及びません。

ネックのレリック加工

ローズウッド指板エイジド加工

指板に日焼け及びプレイ痕を加工し再現します。

作業時間は、ルーターを使用し繊細に行い、5時間程度、オイルなどで仕上げます。

メイプルネックのマスキングによる指板のはく離

予め塗装をはがす部分にマスキングをし、塗装を施し、仕上げにルーターなどで繊細に加工します。

複雑な工程を経ることで、塗装をはがした部分も、高級感をそこねません。

作業時間はネックの塗装も含めると、乾燥時間を除き7時間程度、下地処理や研磨作業、マスキングなどに多くの時間が必要です。

技術的には、ある程度の経験が必要となります。

サビ加工

経年による金属部分のサビを再現します。
作業時間は3時間程度、技術的にはある程度の経験が必要。

ペグ

ブリッジ

プラスチックパーツのレリック加工

ピックガード

ピックガードに塗料をしみ込ませ、経年による劣化を表現します。

作業時間は1時間程度、技術的にも簡単です。

ノブ

ノブに塗料をしみ込ませ、経年による劣化を表現します。
作業時間は1時間程度、技術的にも簡単です。

カスタムピックガード

オリジナルピックガードを製作します。
作業時間は3時間程度。

ネック方向の検査

ネックの取り付け位置が正しいかどうか検査します。
作業時間は0.5時間程度。

ネックポケットの調整

ネックポケットに隙間を木材で埋めて補修します。
作業時間は1時間程度(塗装を伴わない場合)、技術的には、ある程度の木工技術が必要です。

ネック取り付け位置の修正

ネック取り付け方向が適正でない場合は取り付け位置と角度を修正します。
作業時間は1時間程度、技術的には、ある程度の木工技術が必要です。

ネックの仕込み角度の調整

ネックの仕込み角度を調整します。
シムにより調整可能でない場合はネックポケットを修正します。
作業時間は0.5~1時間程度、技術的には、ある程度の木工技術が必要です。

ブリッジ位置の修正

ブリッジの取り付け位置が正しいかどうか検査し、適正でない場合は修正します。
作業時間は1時間程度、技術的には、ある程度の木工技術が必要です。

フレット交換

フレットを打ち直します。
作業時間は4時間程度(指板調整が必要ない場合)、技術的には、ある程度の技術が必要です。

フレットすり合わせ

フレットをすり合わせます。
作業時間は2時間程度、技術的には、ある程度の技術が必要です。

ネックの矯正

トラスロットでの調整に余裕がない場合はネックを矯正し正常な状態に戻します。
ネックを温め矯正します。
作業時間は、矯正時間を除くと1日程度、技術的には、ある程度の技術と経験が必要です。

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