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この度はご依頼をいただき、誠にありがとうございます。
今回のご依頼は、既にレリック加工が施されているストラトキャスターのボディをベースに、
ジョン・フルシアンテのストラトキャスターをモチーフとした再塗装・レリック加工(現代仕様を見据えた方向)を行う内容です。
※個人情報保護のため、一部内容は要約して掲載しています。
今回のご要望(要約)
- ボディのみの再塗装/レリック加工
- ジョン・フルシアンテのストラトをモチーフにした雰囲気の再現
- 将来的な使用によって、さらに自然な経年変化が進む設計
- 既存のダメージ感(元の個体の良さ)を活かしつつ、全体の見栄えを整えたい
今回のように、ターゲットとなるギター像が明確な案件では、
仕上がりの説得力を高めるために Master Build仕様 を採用しています。
Master Build仕様は、単にレリックの強弱(ヘビー/ライト)を変えるためのものではなく、
塗装の質感設計・退色の作り方・細部の風合い・各パーツとの整合性まで含めて、より深く再現するための仕様です。
John Frusciante Stratocaster について(今回の設計方針)
ジョン・フルシアンテのストラトキャスターは、単に「傷が多いギター」ではなく、
長年の演奏・使用環境・補修/交換・日焼け・摩耗の積み重なりによって、独特の風貌へと変化してきた個体として知られています。
そのため、見た目だけを“今この瞬間の形”に寄せるのではなく、
- どの部分が自然に先に退色するか
- どの部分はパーツに隠れて残るか
- 触れる場所/触れない場所でどのように質感差が出るか
- 今後使い込んだ時にどう育つか
といった、時間軸を含んだ設計が重要になります。
今回は、いわゆる「若い頃の雰囲気」だけに固定せず、
現代のフルシアンテ仕様へ自然に近づいていける余地も意識して設計しました。
※フルシアンテ本人機の見え方は、年代・光源・撮影条件・写真ごとの差が大きく、
一部は資料写真の比較検証にもとづく解釈を含みます。
こだわりのポイントまとめ
今回の製作で特に重視したのは、“それっぽさ”ではなく、経年の必然性を感じる表情です。
1)既存レリック済み個体の「深い溝」と木目の整合性
今回もっとも難航したのが生地調整です。
既にレリック加工が施されており、ピックによるダメージ部分には深い溝が彫り込まれていました。
しかし本来、この種の摩耗や削れは 木目方向との関係 が非常に重要です。
そこで今回は、既存の溝を単に消す/残すではなく、
- 既にあるダメージ
- 本来その個体に起こり得る木目の流れ
- 再塗装後に見えるべき自然な削れ方
この3つが矛盾しないように、木地側から再設計しています。
2)イエローの発色を「鮮やかすぎない」方向へ調整
フルシアンテ系のサンバーストで重要なのは、単なる3トーンではなく、
時間を経た日焼け感を含んだイエローです。
今回のイエローは、派手に立たせるのではなく、
経年で少し落ち着いたトーンを狙って調整しました。
3)パーツに隠れる部分との日焼け差を再現
ピックガードや各パーツの下は、露出部分と同じようには焼けません。
この差がないと、完成後に分解した時の説得力が弱くなります。
そのため今回は、隠れる部分/露出する部分の日焼け差も設計して再現しています。
4)レッドの退色にグラデーションを持たせる
サンバーストの“新しさ”が出てしまう大きな原因のひとつは、
レッドの見え方が均一すぎることです。
今回は、レッドの退色具合にあえてムラとグラデーションを持たせ、
出来立てのサンバースト感を抑えた、ビンテージ特有のまだらな表情を作っています。
5)ブラックの劣化速度の差まで表現
ブラックも一様には劣化しません。
場所によって紫外線・摩耗・塗膜状態が異なるため、痩せ方や残り方に差が出ます。
そのため、ブラックも均一に塗る/削るのではなく、
経年による劣化速度の違いを意識して調整しています。
6)塗装剥離部の木目の出方を自然に設計
塗装が剥がれた部分は、ただ木が見えれば良いわけではありません。
- 木目の方向
- 繊維の見え方
- エッジの立ち方/丸まり方
- 周辺塗膜とのつながり
を整え、自然に使い込まれて現れた木肌に見えることを目指しています。
7)塗膜面に浮き出る木目(ラッカー硬化・木の乾燥による表情)
ビンテージらしさは、剥がれた部分だけではなく、
“まだ塗膜が残っている部分の表情” にも現れます。
今回は、ラッカーの硬化や木の乾燥で生じるような
塗膜面に浮き出る木目感も、特殊な塗装方法で再現しています。
8)触れる場所/触れない場所の質感差
同じボディでも、よく触れる場所とそうでない場所では、
- 艶の引け方
- くすみ方
- 汚れの乗り方
- 塗装のよれ感
が異なります。
今回は各部位ごとに状態を変え、
全体を均一に古く見せるのではなく、場所ごとの履歴が見える仕上がりにしています。
9)キャビティ内の汚れ加工
外側だけ雰囲気があっても、パーツを外した時に内部が真新しいと、印象が途切れてしまいます。
そのため、キャビティ内も含めて、
分解時の一体感を損なわないように調整しています。
10)ネックプレート/ネジ穴/パーツ装着後を見越した再現
ボディ単体で完成していても、組み込み後に印象が崩れることがあります。
今回は、ネックプレートやネジ穴、各パーツ装着時の見え方まで想定し、
組み上がった時に自然に見えるバランスで仕上げています。
11)ウェザーチェックは自然発生に近い方法で再現
ウェザーチェックは、線の量だけではなく、
入り方・細さ・方向性・エッジの立ち方が重要です。
今回は、細かめの縦方向のクラックを中心に、
自然に発生したように見える方法で再現しています。
なお、クラックは数か月の使用・環境変化でエッジが立ち、さらに表情が深まっていきます。
今回はその“育つ余地”を残した状態で仕上げていますが、
ご希望があれば、数か月分の経年処理を先行して加えることも可能です。
12)透明感を損なわないまま、くすみを作る塗装設計
サンバーストは特に、透明感を失うと一気に重たく見えてしまいます。
一般的な経年表現では、クリアにアンバー系を混ぜて全体に被せる方法もありますが、
この方法は透明感を損ねやすい側面があります。
今回は、透明感を残しながら、色だけを落ち着かせる方向で設計し、
ビンテージギターらしい空気感の再現を狙いました。
process(製作工程)
※ここからは実際の工程写真とあわせてご覧ください。
1. 受入れ・点検・資料確認
- ボディ状態の確認
- 既存ダメージ/既存レリックの確認
- 参考画像の方向性整理(現代フルシアンテ仕様を基準に調整)
- 同封パーツの確認
2. 分解状態の確認とマスキング設計
- どこを残し、どこを再構築するかを設計
- パーツに隠れる領域の境界確認
- ネジ穴/装着痕の位置関係を確認
3. 既存塗膜の剥離(必要箇所の丁寧な処理)
- 既存塗膜の剥離
- 深いダメージ部周辺の整合性調整
- ピックによる削れ部分も含め、木地とのつながりを再設計


4. 木地調整(今回の要所)
- 既存の削れ跡と木目方向の整合
- 不自然な谷・段差の再設計
- 将来のレリック表現を見据えた下地準備
5. 下地処理(シーラー/乾燥/研磨)
- 下地の安定化
- 塗膜の痩せ方を想定した厚み管理
- 研磨による面の均しと質感準備
6. 日焼け差の設計とカラーリング
- パーツ下/露出部の色差設計
- イエローの経年感調整
- レッドの退色グラデーション
- ブラックの劣化差を見越した塗り分け
7. クリア・乾燥・研磨(質感の基礎づくり)
- 透明感を保つクリア設計
- くすみ表現との両立
- 研磨工程による塗膜表情の整理
8. エイジング加工(塗膜/木肌/キャビティ/各部位)
- 塗膜面の経年風合い調整
- 木地露出部の表情づくり
- キャビティ内の汚れ加工
- 装着後を想定した各部調整
9. ウェザーチェック加工
- 自然発生に近い方法でクラック形成
- 細かめ縦方向を中心に調整
- 全体バランス確認
10. 最終調整・撮影
- 全体バランス確認
- パーツ装着想定での見え方確認
- 最終クリーニング/記録撮影
gallery
仕上がり後の経年変化について
今回の仕上げは、完成時点の見た目だけでなく、
使用後にさらに自然に馴染んでいくことも意識して設計しています。
特にウェザーチェックは、数か月の環境変化や使用によって、
エッジが立ち、より存在感が増していく傾向があります。
「届いた瞬間が完成」ではなく、
ここから弾き手と一緒に育っていく仕上がりとして楽しんでいただければ幸いです。
ichimonziのレリック/リフィニッシュについて
ichimonziでは、単に見た目を古くするのではなく、
素材・塗膜・摩耗・経年変化の関係まで含めて設計するレリック加工を行っています。
- 既存ダメージを活かした再設計
- 塗膜の透明感を損なわない経年表現
- パーツ装着後まで含めた整合性
- 将来の経年変化を見据えた仕上げ
こうした点を重視される方には、特に相性の良い内容です。
リフィニッシュ/レリック加工のご相談は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。




























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