ボディ+ネック+(限定パーツ)を対象に、3トーン・サンバーストの“赤”を分析して最適化。半艶ベースに局所艶を残し、自然発生ウェザーチェックで時間軸の説得力を設計しました。ネックは日焼け感とラッカーの透明感を両立。ピックガードは表裏で色とトーンを整え、導電塗料で実用域のノイズもケア。
仕様(ダイジェスト)
- 対象:Nash JM63
- 施工範囲:ボディ+ネック+パーツ(限定:PG/ペグ/各スクリュー/ストラップピン)
- カラー:再塗装 3トーン・サンバースト
- 赤帯=標準幅/黒エッジ=標準幅/センター=やや赤みのあるアンバー
- 質感:半艶基準+局所艶(接触域・エッジ・操作系に“生きた艶”を残す)
- レリック:ハード寄り(エクストラ未満)、チェックは細めで“びっしり”は回避
- ウェザーチェック:温度差による自然発生(Fender系アプローチ)
- ピックガード:赤みを帯びたアンバー調整/ピック痕のスクラッチ/裏面もトーン整え
- 電装ケア:導電塗料塗布
製作工程(プロセスが“仕上がり”をつくる)
- 受入れ・分解・初期点検
木部の含水/塗膜の状態/過去リペア痕を観察。金属小物は艶・酸化の階調を採寸メモ化。



- 下地診断(木地&塗膜)
既存塗膜の硬さ・層構成をチェック。密着の悪い層を特定。 - 塗膜剥離と木地整形
力のかかる縁は“角を落としすぎない”方針で整形。エッジの生きたRを残す。


- 下地再構築(シーラー/ニトロセルロースラッカー)
木目の導管を埋め切らず“呼吸感”を残す。後工程の艶差に効く要なので丁寧に。 - カラー設計(サンバースト)
参考画像の赤を分解:彩度は控えめ、温度は高め。黒→赤→アンバーの境界の柔らかさを霧化で制御。
センターのアンバーは赤みをわずかに含ませ、後年の退色で破綻しない配合に。 - クリア薄膜積層(ニトロセルロース)
各層ごとに研磨→半艶基調へ向けて下地の平面を作る。局所艶を残す面は研磨ピッチを変える。


- ネック(透明感×日焼け)
- クリア再塗装(指板除く):アンバーは“塗りで濁らせない”設計。
- エッジ面取り(年代相応R):ヘッド周り/フレット間の角を適正化。
- 指板レリック再設計:量ではなく“リズム”(位置・濃淡・方向)を重視。
- グリップ側の摩耗を追加し、指板との時間差で統一感を出す。


- ウェザリング準備(熱履歴の付与)
自然発生チェックに向けて温度差のパターンを数サイクル管理。細め主体で走らせ、びっしりは回避。 - パーツ(限定)調整
- ピックガード表:赤みを含むアンバーへトーン調整。ピック痕は重心位置と振り角を揃え細線で控えめに。
- ピックガード裏:表の透過と整合するトーンへ調整。
- 各スクリュー/ストラップピン:艶落ち→軽い酸化→清拭痕の順で“触れてきた時間”を作る。



- 導電処理/導通確認
キャビティへ導電塗料。実用的なノイズ耐性を確保。 - 組付け・セットアップ
ネック角・弦高・オクターブ・テンションを合わせ、艶差とチェックが活きるライティングで検品。 - 最終検品・撮影
近接・斜め光・反射の“転がり”を確認。ミクロな破綻がないかを写真で詰めてから出荷へ。
こだわり(設計思想の核)
- 赤の最適化:強すぎない彩度で温度感を残し、退色しても破綻しないバランスへ。
- 半艶+局所艶:写真より実物で説得力が立つ艶差。接触域の艶は“演奏時間”を語る。
- 透明感×日焼け(ネック):濁らせないアンバー。面取りR/指板リズム/グリップ摩耗で時間の整合を作る。
- “水分のにじみ”と汚れ:フレット近傍の濃淡、汗の曇り、清拭痕の方向性まで合わせる。
- PGは表裏で完結:裏面まで手を入れ、表の色と透過の破綻をゼロに。
- 自然発生チェック:走り・分岐・停止のランダム性は自然物の証。細め主体で像を整える。
- 導電塗料で実用も:静粛性は“音像の黒”を支える基礎体力。
ウェザーチェックと経年変化
- 自然発生(Fender系)を採用。密度傾向は温度管理で寄せますが、微視的ランダムは残します。
- ラッカーの時間:約半年で概ね乾燥、約2年で完全硬化。半年ほどでチェックのエッジが立ち、線が見えやすくなります。ぜひ時間の変化もお楽しみください。
仕上がり
取り扱いのヒント(ラッカー)
- ケミカルはギター用推奨品のみ。
- 急激な温湿度変化はチェックの進行や面の暴れを促します。
- クリーニングは乾いた柔らかいクロス→必要時のみ薄い湿り→すぐ乾拭き。
補記(今回の“見えない仕事”)
- エッジのRは“削った感”が出ないよう元の骨格を残す微差加工。
- 艶差は後工程の研磨ピッチで作り、塗りで作らない。
- スクラッチは写真で“映えるだけ”を避け、指の軌跡と一致する角度・長さで制御。
“派手さ”より近接で説得力が立つ一本を目指しました。
半艶の面、細い自然チェック、最適化した赤帯、透明感あるネック。実物でこそ伝わる質感です。
同じようなご相談をお持ちの方へ
ichimonzi では、ヴィンテージの雰囲気を「それっぽく」ではなく、なぜそう見えるのかから設計して再現します。今回のように3トーン・サンバーストの赤帯最適化/半艶設計/自然発生ウェザーチェック/ネックの透明感と日焼けの両立といった要件も、工程から積み上げて形にします。
精度を一段上げるために、初回のご連絡で下記をお知らせいただけると助かります。
- 参考個体の写真(できれば 屋外日陰/室内の拡散光/斜め光 の3条件、フロント/バック/ヘッド、ピックガード裏もあると最適)
- サンバーストの好み(2 or 3トーン、赤帯の温度感・幅、黒エッジ幅、センターのアンバーの赤み)
- 艶のバランス(マット/半艶/グロス、局所艶の有無)
- ウェザーチェック(密度=細め/中程度、自然発生かクラフト方式か)
- レリック強度(Light / Medium / Heavy / ※エクストラはご相談)
- ピックガード(色味=赤みを含むアンバー等、スクラッチの強さ・向き、裏面処理の要否、反り表現の可否)
- ネックの触感と形状(粘り/サラつき、エッジRの強さ、指板とグリップの摩耗バランス)
- 実用面(導電処理の要否、ステージ運用で優先したい要素〈ノイズ・耐久・メンテ性〉)
楽器の仕様と現在の状態に合わせて、最適なプラン・概算見積・納期目安をご提案します。どうぞお気軽にご相談ください。




































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