Gibson Les Paul Goldtop Refinish | Vintage Aged Gold with Brass Powder & Fine Weather Checking

Custom Order

この度は、Gibson Les Paulのリフィニッシュ・レリック加工をご依頼いただき、誠にありがとうございました。

今回のテーマは、1950年代のLes Paul Goldtopが長い年月を経て見せる、独特の深みのあるゴールドと、美しいウェザーチェックの再現です。

オーナー様は、以前当工房でご覧になったゴールドトップの風合い、特に細かく横方向に走るウェザーチェックをとても気に入ってくださっていました。

今回の製作では、その印象を大切にしながら、Snowy Whiteが愛用する1957年製Goldtopなども参考に、オーナー様と一緒に仕上がりの方向性を考えました。

特定のヴィンテージ個体をそのまま複製することが目的ではありません。

長年使い込まれたゴールドの深い色合い、細かなウェザーチェック、そして今後もステージで弾き続けられる一本。

その三つを大切にした、ichimonzi Guitars独自のゴールドトップを目指しました。


お客様のご要望

今回のオーナー様は、これまで当店で製作・加工したStratocasterをライブなどで愛用してくださっているギタリストです。

ギターは飾っておくものではなく、ステージで思い切り弾きたい。

そのため、ヴィンテージらしい風合いを大切にしながらも、過度に荒れた印象にはせず、ゴールドトップの塗装そのものが持つ美しさを中心にデザインしました。

主なご要望は以下のとおりです。

  • Goldtop Color:長年の日焼けや経年変化によって、ブロンズから茶色寄りに沈んだゴールド
  • Weather Checking:横方向に細かく走る、密度の高いウェザーチェック
  • Mahogany Color:トップのゴールドに調和する、少し暗めの焦げ茶(ダークバック)
  • Aging:過度な塗装剥がれや荒々しさよりも、自然な塗膜の経年変化を重視
  • Design:複数のヴィンテージ個体の特徴を組み合わせたオリジナルデザイン
  • Concept:観賞用ではなく、ステージで弾き続けるためのヴィンテージギター

Les Paul Goldtopの歴史 — なぜゴールドだったのか

Gibson Les Paulが誕生したのは1952年。

Gibson初のソリッドボディ・エレクトリックギターとして登場したLes Paulは、アーチ状に削り出されたメイプルトップ、マホガニーバック、そして特徴的なゴールドフィニッシュを備えていました。

実は、このゴールドというカラーには、レス・ポール氏自身の意向が反映されています。

ゴールドには高級感があり、特別な楽器にふさわしいという考えがあったとされています。

発売当初は2基のP-90ピックアップとトラピーズ・テールピースを備えていましたが、その後、ブリッジやテールピースに改良が加えられました。

1950年代半ばにはTune-O-Maticブリッジとストップバー・テールピースの組み合わせが登場し、1957年にはハムバッキング・ピックアップへの移行が進みます。

そして1958年、Les Paulには新たにサンバースト仕上げが採用されました。

わずか数年の間に多くの変化を遂げた1950年代のGoldtopですが、現在でも初期Les Paulを象徴するカラーとして、独特の存在感を放っています。


Goldtopの秘密 — その金色は真鍮から生まれる

ヴィンテージGoldtopを語るうえで、欠かせないのが塗料に使用された金属粉です。

1950年代のオリジナルGoldtopでは、ブラス(真鍮)系の金属粉を使用したゴールド塗料が採用されていました。

真鍮は銅と亜鉛を主成分とする合金です。

現代の一般的なメタリック塗料とは異なり、金属粉そのものが光を複雑に反射することで、深みのある独特なゴールドが生まれます。

さらに興味深いのは、この金属成分が年月とともに酸化していくことです。

当初は鮮やかなゴールドであった塗装も、長年の使用環境や塗膜の状態によって、輝きが落ち着き、緑がかった色味や暗く沈んだ表情を見せることがあります。

そこへラッカーの黄変、艶の変化、ウェザーチェック、摩耗などが重なり、一台ごとに異なるヴィンテージの風合いが生まれます。

つまり、ヴィンテージGoldtopの色は、単なる金色ではなく、金属と塗膜が長い時間をかけて変化した結果なのです。

今回は真鍮粉を使用してゴールドを再現

今回ichimonzi Guitarsでは、このヴィンテージの考え方を大切にし、実際に真鍮粉を用いてゴールドを再現しました。

重要なのは、金色に見せるだけではないことです。

真鍮粉が持つ金属独特の反射、光の当たり方による表情の違い、そして長年使い込まれたような落ち着いた色合い。

これらを同時に表現するために、塗膜全体の色と光のバランスを考えながら仕上げています。


Build Process|製作工程

1. リフィニッシュ — 塗装を一度取り除く理由

ichimonzi Guitarsのレリック加工では、基本的に既存塗装を取り除き、下地から塗装を作り直します。

既存の塗膜の上に傷やウェザーチェックを加えるだけでは、ヴィンテージ特有の塗膜構造や質感を十分に再現できないためです。

実際のヴィンテージギターでは、表面のクリア、カラー層、下地、木部が、それぞれ異なる状態で経年変化しています。

たとえば、塗装が剥がれた部分でも、剥がれたばかりの木肌と、長年露出していた木肌とでは、色や質感が異なります。

また、塗装の縁にも、薄く摩耗した部分や、時間とともに痩せた部分が存在します。

こうした違いを再現するためには、傷の形だけでなく、その下にある塗装の状態から考える必要があります。

2. Nitrocellulose Lacquer — 薄い塗膜へのこだわり

塗装にはニトロセルロースラッカーを使用します。

ヴィンテージの塗膜を再現するうえで、当店が特にこだわっているのが塗膜の厚みです。

塗膜が必要以上に厚くなると、見た目が重くなり、細かなウェザーチェックや塗装の痩せ具合も不自然に感じられることがあります。

そのため、各工程で塗装と研磨を重ねながら、全体の厚みと表面の質感を調整していきます。

単に薄く塗るのではなく、必要な層を確保したうえで余分な厚みを残さないこと。

その積み重ねが、ラッカーらしい自然な表情につながると考えています。

3. Brass Powder Gold — 真鍮が生み出す独特の輝き

今回のゴールドトップで、特に時間をかけて考えたのがカラーの再現です。

目指したのは、新品のように明るく鮮やかなゴールドではありません。

長い年月を経て、ゴールドの輝きが少しずつ沈み、ブロンズから茶色へと変化したような色合い。

この色を再現するうえで大切なのが、真鍮粉そのものの輝きを失わないことです。

暗い色を強く重ねれば、茶色いゴールドを作ることはできます。

しかし、それでは金属粉ならではの奥行きや輝きまで失われてしまいます。

そこで、ゴールドの明るさを抑える一方で、光が当たった際には真鍮特有の細かな反射が感じられるよう、色の重なりを調整しています。

正面から見たとき、斜めから見たとき、自然光や照明の下で見たとき。

それぞれで異なる表情を見せるところも、金属粉を用いたGoldtopの魅力です。

4. Aged Gold — 茶色く焼けたゴールドの再現

今回のカラーは、オーナー様と相談して決めたものです。

参考にしたヴィンテージ個体の中には、かなり強いエイジングが施されたものもありました。

しかし、今回求められていたのは、極端な劣化表現ではなく、金属とラッカーが長い時間を経て変化したような自然な色合いです。

そのため、単純にゴールドを茶色く塗りつぶすのではなく、金属の輝きとくすみが共存する色を目指しました。

明るい部分にはゴールドの面影が残り、暗い部分にはブロンズのような深みが感じられる。

一見すると落ち着いた茶色寄りのゴールドですが、光を受けると金属特有の存在感が現れる。

そんなヴィンテージGoldtopらしい表情を大切にしています。

5. Dark Mahogany — ゴールドを引き立てる焦げ茶

ゴールドトップの印象を決めるのは、トップのカラーだけではありません。

ボディバックなど、マホガニー部分の色合いも重要です。

1950年代のGoldtopには、ゴールドのトップとブラウンのマホガニーを組み合わせた個体が多く見られます。

今回のようにゴールドを暗く沈ませる場合、マホガニー部分が明るすぎると、全体の色のバランスが崩れてしまいます。

そこで今回は、ブロンズ〜茶色寄りのトップに調和するよう、少し深い焦げ茶を方向性として選びました。

トップの金属的な質感と、マホガニーの落ち着いた木の質感。

この二つの対比が、Goldtop全体の美しさを引き立てます。

6. Fine Weather Checking — クラックそのものをデザインする

今回の製作で、もう一つの主役となったのがウェザーチェックです。

ウェザーチェックとは、ラッカー塗膜に生じる細かなひび割れのことです。

ニトロセルロースラッカーは、乾燥や経年によって塗膜の性質が変化します。

また、温度や湿度の変化に対して木材と塗膜の膨張・収縮の仕方が異なるため、長い年月の中で細かなひび割れが生じる場合があります。

ヴィンテージギターでは、その入り方も個体によって実にさまざまです。

今回オーナー様が希望されたのは、以前当工房でご覧になったGoldtopのような、横方向に細かく走るウェザーチェックです。

大きなひび割れを目立たせるのではなく、細かな線が幾重にも重なり、塗装面そのものに豊かな表情を与えること。

特にGoldtopでは、ウェザーチェックの線が光を受けることで、金属粉の輝きと複雑に交わります。

見る角度によってクラックが浮かび上がったり、反対にほとんど見えなくなったりする。

傷を描くのではなく、塗膜が年月を経て変化した姿を作る。

ichimonzi Guitarsがウェザーチェックの再現で大切にしている考え方です。

7. Aging — 傷の数ではなく、時間の整合性

レリック加工では、傷や塗装剥がれを多く加えれば、ヴィンテージらしくなるとは限りません。

ギターには、演奏や保管によって変化しやすい場所と、比較的変化しにくい場所があります。

腕や衣服が触れる部分、ピッキングによって摩耗する部分、金属パーツ周辺、光が当たりにくい部分。

それぞれ経年変化の理由が異なります。

塗膜の艶、擦れ方、色の残り方、木肌の変化にも、自然な時間の流れを感じられることが大切です。

今回のGoldtopでは、ウェザーチェックと焼けたゴールドの美しさを主役にするため、過度な傷や塗装剥がれだけに頼らないデザインを考えました。

そして完成した時点で古く見えるだけではなく、これからオーナー様が実際に演奏し、さらに年月を重ねていくことも大切にしています。


Gallery|完成画像


最後に — これから時間を重ねていくGoldtop

ヴィンテージギターの魅力とは、単に古いことではないと思っています。

製造された時代の素材や技術、長年使われてきた環境、そして演奏者が刻んできた時間。

それらが重なって、一台のギターに独特の表情が生まれます。

今回のGoldtopでは、1950年代の塗装に用いられた真鍮という素材に立ち返り、その輝きと経年変化を研究しながら製作しました。

茶色く沈んだゴールド、横方向に走る細かなウェザーチェック、深い焦げ茶のマホガニー。

それぞれが違和感なく調和し、一本のギターとして自然に見えることを大切にしています。

そして何より、このギターは今後もステージで演奏されていく一本です。

完成が終着点ではなく、これからオーナー様の演奏によって新しい時間が刻まれていく。

その変化も楽しんでいただけることを願っています。

この度は、大切なギターをお任せいただき、誠にありがとうございました。

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