John Fruscianteの1962年製サンバースト・ストラトをモチーフに、3トーンサンバースト、ホンジュラスローズウッド指板、Fender Pure Vintage ’57/’62、Ilitch BPNCSを組み合わせたMaster Build仕様のフルオーダーStratを製作しました。
この度は、ichimonzi Guitarsへフルオーダー製作のご依頼をいただき、誠にありがとうございます。
今回製作したのは、John Fruscianteが愛用する1962年製Sunburst Stratocasterをモチーフにした一本です。
ただし、単に外観だけを似せることを目的にしたギターではありません。
オーナー様は、John Fruscianteのストラトに対する深い憧れをお持ちでありながら、同時に実際に演奏する楽器としての使いやすさ、ノイズ対策、指板の感触、トーンコントロールの自由度まで非常に丁寧に考えられていました。
そのため今回は、
- John Fruscianteの1962年製Stratocasterを思わせる3トーンサンバースト
- ホンジュラスローズウッド指板
- 210Rの指板
- Fender Pure Vintage ’57/’62 Stratocaster Pickup Set
- Ilitch Electronics BPNCS
- マスタートーン+ブレンダー回路
- ニトロセルロースラッカー仕上げ
- Master Build仕様のエイジング
を軸に、外観・演奏性・ノイズ対策・音の反応を総合的に設計しました。
お客様のご要望
今回の主なご要望は、John Fruscianteのサンバースト・ストラトをイメージしたフルオーダー製作でした。
特に大切にした点は、単なるレリック再現ではなく、
「ジョン・フルシアンテのストラトらしさを持ちながら、実際に長く弾き続けられる一本にすること」
です。
ご相談の中で、仕様は段階的に固まっていきました。
最終的なご要望は下記の通りです。
- John Fruscianteの1962年製Stratocasterをモチーフにすること
- 3トーンサンバースト
- アルダーボディ
- ホンジュラスローズウッド指板
- 指板Rは210R
- 指板はできるだけ黒に近い印象にすること
- Fender Pure Vintage ’57/’62 Stratocaster Pickup Setを使用すること
- Ilitch Electronics BPNCSを搭載すること
- キャビティ内の導電塗料、ピックガード裏シールド、高品質配線材も併用すること
- リアPUにも効くマスタートーンにすること
- ブリッジ単体時にセンターPUを足せるブレンダー回路にすること
- GOTOH SD91-05M-L6 Nickelを使用すること
- Master Build仕様で、自然な経年変化を表現すること
細かな仕様まで一つひとつ確認しながら進めることで、単なる「雰囲気の似たギター」ではなく、オーナー様の演奏と好みに合わせた実用的なカスタムギターとして仕上げました。
John Fruscianteの1962 Stratocasterについて
John Fruscianteの1962年製Sunburst Stratocasterは、彼を象徴するギターのひとつです。
Red Hot Chili Peppers復帰後の活動においても重要な一本として知られ、温かく、枯れていて、それでいてコードの分離がよいサウンドは、多くのギタリストに強い印象を残しています。
1960年代初期のStratocasterは、アルダーボディ、ローズウッド指板、ニトロセルロースラッカー、ヴィンテージスタイルのトレモロなど、現在でも高く評価される要素を多く持っています。
また近年のJohn Frusciante仕様では、シングルコイルらしい音を残しながらノイズを抑えるため、Ilitch Electronicsのハムキャンセリングシステムが採用されている点も特徴です。
シングルコイルの明るさや反応を残しながら、ライブやレコーディングで扱いやすい静粛性を得る。
この考え方は、今回の製作でも重要なポイントになりました。
Specifications
Body
- Body Style:1962 Stratocaster Style
- Body Material:2 Piece Alder / AA Grade
- Finish:Nitrocellulose Lacquer
- Color:Aged 3-Tone Sunburst
- Aging:Relic / Natural Weather-Checking
- Build Grade:Master Build
Neck
- Neck Material:Maple / AA Grade
- Neck Shape:“C”
- Scale Length:25.5″ / 648 mm
- Fingerboard:Honduras Rosewood
- Fingerboard Style:Slab Fingerboard
- Fingerboard Radius:210R
- Frets:21F / Medium Jumbo
- Nut:Bone
- Nut Width:43.5 mm
- Neck Plate:4-Bolt
- Neck Finish:Nitrocellulose Lacquer
- Fingerboard Finish:Black Stain
Electronics
- Pickups:Fender Pure Vintage ’57/’62 Stratocaster Pickup Set
- Pickup Configuration:SSS
- Magnet:Alnico V
- Polarity:NON-RWRP / Same Polarity Set
- Controls:Master Volume / Master Tone / Blender
- Potentiometers:CTS
- Switch:MONTREUX OAK 5way switch
- Output Jack:Switchcraft
- Wiring:Belden / High Grade Wiring
- Noise Reduction:Ilitch Electronics BPNCS
- Shielding:Conductive Paint / Pickguard Aluminum Shield
Hardware
- Bridge:GOTOH 6-Saddle Synchronized Tremolo
- Tuning Machines:GOTOH SD91-05M-L6 Nickel
- Pickguard:3-Ply Aged Mint Green
- Control Knobs:Aged White Plastic
- Hard Case:FENDER Classic Series Wood Case Strat/Tele, Navy Blue
1. 木材選定|鳴りと安定性のバランス
今回のボディには、2ピースのアルダー材を使用しました。
Stratocasterらしい中域のまとまり、軽快なアタック、コードを弾いたときの分離感を考えると、アルダーは非常に相性のよい材です。
ただし、アルダーであれば何でもよいわけではありません。
重量、木目、剛性、加工後の安定性を確認しながら、完成後にしっかり楽器として鳴る材料を選定しています。
ネックにはメイプル材を使用し、指板にはホンジュラスローズウッドを採用しました。
ホンジュラスローズウッドは流通量が限られる希少材で、密度がありながら反応が硬くなりすぎず、ローズウッドらしい粘りと倍音感を持っています。
今回はオーナー様の「黒に近いローズウッドにしたい」というご希望に合わせ、指板表面をステインで染色しています。
2. ホンジュラスローズウッド指板と黒系ステイン
オーナー様はローズウッドの音を好まれており、そのうえで、できるだけ黒に近い指板をご希望されていました。
そこで今回は、ホンジュラスローズウッド指板に黒系のステイン処理を行っています。
これは表面に塗膜を乗せる塗装ではなく、木の表面付近に染料を染み込ませる方法です。
木材の導管や質感を残しながら、色味だけを深く落ち着かせることができます。
強く爪で引っかくような扱いをすれば木部ごと削れる可能性はありますが、通常の演奏範囲では自然な状態を保ちやすい仕上げです。
黒々とした見た目にしながらも、ローズウッドらしい質感を失わないこと。
ここは今回の指板仕上げで大切にしたポイントです。
3. 指板R 210R|ヴィンテージ感と演奏性の中間
今回、指板Rは210Rで仕上げています。
1960年代初期のFenderを意識する場合、より丸い指板Rを選ぶ考え方もあります。
ただ、今回のギターは飾るための再現品ではなく、実際に演奏するためのフルオーダーです。
210Rは、コードを押さえたときの自然な丸みを残しながら、チョーキングやビブラートにも対応しやすい仕様です。
John Fruscianteのような、コード、カッティング、単音のニュアンス、強弱の幅を大切にするプレイヤー像を考えても、210Rは非常に扱いやすい選択です。
ヴィンテージの雰囲気を残しながら、現代の演奏性も確保する。
今回のネック設計では、そのバランスを重視しています。
4. Body / Neck 木工
木工作業では、ボディ外形、ネックポケット、ピックアップキャビティ、コントロールキャビティ、ネック外形を加工しました。
Stratocasterは一見シンプルな構造ですが、実際にはネックポケット、ブリッジ位置、センターラインの精度が非常に重要です。
特に今回のように、Ilitch BPNCSやブレンダー回路を含む電装仕様の場合、後から無理に帳尻を合わせるのではなく、最初の木工段階から全体の収まりを考えて進める必要があります。
木材の動きや乾燥状態を確認しながら、段階的に加工を進めています。














5. Nitrocellulose Lacquer|薄い塗膜で仕上げる
塗装はニトロセルロースラッカーで行っています。
当店のヴィンテージ加工は、完成した塗膜の表面だけを削って古く見せる方法ではありません。
下地、カラー、クリア、それぞれの層がどのように変化するかを考えながら作業します。
塗膜は厚くすれば見た目は整えやすくなりますが、楽器としての反応は重くなりやすくなります。
そのため、各工程の研磨と乾燥を丁寧に行い、必要以上に厚い塗膜にならないよう調整しています。
ラッカーらしい質感、触れたときの薄さ、時間を経たギターの空気感。
これらは、最終的なレリック加工だけでなく、塗装工程そのものから作っていきます。
6. 3-Tone Sunburst|赤の残り方と外周の締まり
今回のカラーは、John FruscianteのStratocasterを連想させる3トーンサンバーストです。
3トーンサンバーストで重要なのは、単に黄色、赤、黒を重ねることではありません。
- 中央の黄色の透明感
- 赤の残り方
- 外周ブラックの幅
- エルボー部やコンター部での色の薄れ方
- パーツ下に残る色と露出部の差
これらを整えることで、古いサンバーストらしい奥行きが出ます。
新品の鮮やかさではなく、長く使われたことで少しずつ色が落ち、塗膜が痩せ、木と塗装の表情が近づいていくような雰囲気を狙いました。
7. Aging / Relic|傷ではなく、時間の整合性
レリック加工で最も大切なのは、傷の数ではありません。
どこに、なぜ、その変化が起きたのか。
その理由が自然に見えることです。
例えば、
- ピッキングによる摩耗
- 腕が触れる部分の艶の変化
- 衣服やストラップとの接触
- ネック裏の摩耗
- パーツの下に残る塗装
- ラッカーの乾燥収縮
- 木材と塗膜の動き
これらはすべて原因が違います。
同じ道具、同じ力加減、同じ方向で傷を作ってしまうと、全体が人工的に見えてしまいます。
Master Build仕様では、それぞれの変化を分けて考え、最後に一本の時間軸として統合していきます。
今回も、John FruscianteのStratocasterが持つ強い使用感を意識しながら、やりすぎて不自然にならないよう、全体のバランスを整えました。
8. Fender Pure Vintage ’57/’62 Stratocaster Pickup Set
ピックアップには、Fender Pure Vintage ’57/’62 Stratocaster Pickup Setを採用しました。
当初は別のピックアップも候補にありましたが、今回はIlitch BPNCSとの相性を重視し、すべて同一極性のヴィンテージ系ピックアップとしてこちらを選択しています。
Pure Vintage ’57/’62は、強い出力で音を押し出すタイプではなく、木材、塗膜、ブリッジ、指板、演奏タッチの違いを素直に出しやすいピックアップです。
John Fruscianteのサウンドを考えると、歪ませたときの派手さだけでなく、クリーンや軽いクランチでの反応、コードの分離、右手のニュアンスが非常に重要です。
今回のギターでは、ピックアップだけで音を作り込むのではなく、ギター全体の鳴りを活かす方向で組み合わせています。
9. Ilitch Electronics BPNCS|シングルコイルの音を残すノイズ対策
今回の大きな特徴のひとつが、Ilitch Electronics BPNCSの搭載です。
BPNCSは、バックプレート内部にノイズキャンセル用のコイルを組み込んだシステムです。
一般的なノイズレスピックアップのようにピックアップそのものを交換するのではなく、シングルコイルの質感をできるだけ残したままハムノイズを抑えることを目的としています。
John Fruscianteの近年のStratocaster仕様でも、Ilitchのハムキャンセリングシステムは重要なポイントとして知られています。
今回のBPNCSは、
- Strength:VNT
- Model:REG
- Color:P/B/P
を選択しました。
P/B/Pは、Parchment / Black / Parchmentの3プライ仕様で、ヴィンテージ系の外観にも自然になじみます。
REGは通常の弦交換スリットを持つタイプで、見た目もすっきりしています。
10. Shielding|BPNCSだけに頼らないノイズ対策
今回はBPNCSに加え、キャビティ内の導電塗料、ピックガード裏のアルミシールド、高品質配線材、Switchcraftジャックも組み合わせています。
BPNCSはシングルコイル由来のハムノイズ対策として非常に有効ですが、ギターのノイズはそれだけで決まるわけではありません。
照明、電源環境、配線の取り回し、アース処理、ジャック周辺の状態など、複数の要素が関係します。
そのため今回は、
- キャビティ内のシールド
- ピックガード裏のシールド
- Belden系配線材
- Switchcraftジャック
- BPNCSの最終調整
を組み合わせ、できるだけ実用的で安定した状態を目指しました。

11. Master Tone / Blender Wiring
電装は、一般的なStratocaster配線をそのまま採用するのではなく、オーナー様のご希望に合わせてカスタムしています。
PU側のトーンノブは、リアピックアップにも効くマスタートーンとして使用できるようにしました。
これにより、ブリッジ単体の音が明るすぎる場合でも、手元で自然に高域を整えることができます。
もう一方のトーンノブは、ブレンダー回路として使用します。
今回の仕様では、ブリッジ単体時にセンターピックアップを少しずつ足せるようにしています。
通常の5wayでは得にくい中間的な音を作れるため、カッティングやクランチでの表情が広がります。
操作を複雑にしすぎず、必要な時だけ音色を広げられる。
今回の回路は、その使いやすさを重視しました。
12. GOTOH Hardware|安定した実用性
ペグにはGOTOH SD91-05M-L6 Nickelを使用しました。
ヴィンテージスタイルの外観を保ちながら、チューニングの滑らかさと安定性に優れたペグです。
今回のようなStratocasterスタイルでは、見た目の雰囲気と実用性の両方が重要になります。
ブリッジもGOTOH製の6点シンクロナイズドトレモロを採用しています。
ヴィンテージStratocasterらしい構造を持ちながら、現代の精度で安定したセッティングを行える点が大きな利点です。

13. Final Assembly / Setup
最終組み込みでは、ネック、ブリッジ、ピックアップ、電装、BPNCSのバランスを確認しながら調整を行いました。
BPNCSは取り付けて終わりではなく、実際のピックアップ、配線、ギターの向き、ノイズ環境に合わせて調整する必要があります。
今回のようにNON-RWRPのPure Vintage ’57/’62を組み合わせる場合、BPNCSとの相性は良好ですが、最終的な静粛性は調整によって大きく変わります。
そのため、各ポジションでの音量、ノイズ、トーンの変化を確認しながら、自然なシングルコイル感を残すように仕上げています。
14. 完成
完成したギターは、John Fruscianteの1962年製Sunburst Stratocasterをモチーフにしながら、オーナー様の希望を細部まで反映した一本になりました。
3トーンサンバーストの退色感、ホンジュラスローズウッド指板の黒味、210Rの演奏性、Pure Vintage ’57/’62の素直な反応、Ilitch BPNCSによる実用的なノイズ対策。
それぞれの要素が単独で目立つのではなく、一本のギターとして自然にまとまることを大切にしています。
ヴィンテージギターの魅力は、単に古く見えることではありません。
触れたときの質感、弾いたときの反応、パーツごとの経年の違い、そして持ち主の感覚に寄り添うこと。
今回の製作でも、その部分を大切にしながら作業を進めました。
この度は大切な一本の製作をichimonzi Guitarsへお任せいただき、誠にありがとうございました。
長く弾き込んでいただく中で、さらに良い表情へ育っていく一本になれば幸いです。
Gallery















本製作について
本製作は、ichimonzi Guitarsによる独自製作ギターです。
John Frusciante氏の使用ギターから着想を得たInspiredモデルであり、Fender社、Red Hot Chili Peppers、John Frusciante氏の公式製品・公認製品ではありません。










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