ビンテージ(レリック)加工って何?きずだらけで…

Relic

レリック加工とは

レリック加工とは使い込まれた風合いを特殊な加工によって再現することです。

2009年Fender Custom Shopが火付け役となりアメリカでブームになりました。
2020では、ギターのデザインの一つのカテゴリーとなっています。
解りやすい例ではジーンズのダメージ加工があります。

現在では、ジーンズのほとんどがダメージ加工を施したものが売られているように、ギターでも今後メジャーになる可能性は高いのではないでしょうか。

どんな魅力がある

では、どんな魅力があるのでしょうか。
レリック加工したエレキギターを最初に見たときには、単に傷がついて汚れただけの物じゃない?って思うのではないでしょうか。また、衝撃とかなりの抵抗感に見舞われるはずです。

例えば、新しいスマートフォンを買ったのに、速攻で、アスファルトに落として傷がついた。
なんてときに、これはビンテージ感がでた!!味がある!なんて思いません。

しかしながら、古い家具や大切に長く使い続けていたものには確かに味があるものです。
ビンテージ家具を見て汚らしいと感じる人はごく少数でしょう。

中でも、革製品や、木製品は使い込むほどに風合いが増すものではないでしょうか。
エレキギターも木製品なので、エイジド感が似合わない訳はありません。

その証拠に、ボロボロになったギターを長年愛用する有名なアーティストもたくさん存在します。
そのギターからはアーティストの歴史が伺えるほどです。

スティーヴィー・レイ・ヴォーン「Stevie Ray Vaughan」やゲイリームーア「Gary Moore」そのほかたくさんのアーティストが、ダメージギターを愛用してきました。

「Gary Moore 伝説のレスポール」by ichimonzi
「Stevie Ray Vaughan Number 1」by ichimonzi

では、アメリカで流行しているのになぜ日本ではそれほどではないのでしょうか。

買ったばかりのスマホに傷が付いてもビンテージ感が生まれない

私たちはモノを大切にする文化があります。
モノを粗末にするとバチがあたるなんて、心のどこかで思っていたりもします。
では、ビンテージ感のあふれたギターは受け入れられるはずなのです。

しかしながら、そうではありません。
真新しいギターを好む人の割合が多いような気がします。

なぜでしょう?

おそらく、ビンテージ加工(レリック)されたギターに対する誤解が原因ではないでしょうか。

国内で多く見かけるレリック加工されたものは「単に傷をつけられただけの新しギター」が多いからだと思われます。
これは、買ったばかりのスマホに傷が付いても、ビンテージ感が生まれないのと同じことではないでしょうか。

なぜ本物のレリック加工には質感があるのか。

たとえば、ビンテージギターの塗装が剥げるには段階があります。

  1. クリアコートの変色、劣化、クラック(ウエザーチェック)
  2. クリアコートのはげ
  3. カラー塗装のはげ
  4. 下地材の劣化、はげ
  5. 木肌の劣化
クリアコートの劣化、はげ
クラック
カラー塗装のはげ
下地材の劣化、はげ
木肌の劣化

これらの多くの段階がビンテージギターには存在します。

それでは、「単に傷をつけただけのギター」に見られる違和感はなぜ生まれるのでしょうか。

レリック加工を行うためには、下地塗装の前の段階から「入念な準備」が必要となります。

塗装劣化の段階である、日焼け、ウェザーチェック、クリア塗装のはがれ、カラー塗装のはがれなど、順に進行する段階を再現できるように予め塗装前から入念な準備を行うのです。

それらの準備が行われていない塗装にレリック加工を行うと不自然な状態となってしまうからなのです。これが 「単に傷をつけただけのギター」 の違和感の原因ではないでしょうか。

「単に傷をつけただけのギター」「丁寧にレリック加工されたギター」の違いは、「削り取った」と「剥がれた」の違いに相当し、それらの質感は大きく異なります。
「削り取った」場合のイメージは大切なものに傷がついてしまったときと同様で、「剥がれた」場合のイメージは大切に使い続けて味が出たアンティークのようなもの。
このように、レリック加工を前提としない塗装に後からレリック加工を行うと、どうしても不自然になってしまうのです。

「単に傷をつけられただけの新しギター」by ichimonzi

「丁寧にレリック加工したギター」by ichimonzi

ichimonziでのレリック加工の特徴

当店のレリック加工は、「クリアコートの変色、劣化、クラック(ウエザーチェック)」、「クリアコートのはげ」、「カラー塗装のはげ」、「下地材の劣化、はげ」、「木肌の劣化」それぞれの過程を完全に再現する事が可能です。お好みのでデザイン、お好みのアーティストのギターなどを忠実に再現する事ができます。

Nitrocellulose Lacquer Finish

オールニトロセルロースラッカー仕上げはレリック加工には欠かせない塗装方法です。
プライマー(下塗り)、素地調整(中塗り)、顔料(上塗り)、クリア(仕上げ)すべてをニトロセルロース、ニトロセルロースラッカーを用いて塗装しています。塗装の厚みを薄くするためにそれぞれの工程の間の研磨作業を大切に行っています。また、塗装の最終研磨も完全に傷を無くすまで磨き上げてから、磨き傷を加工しています。一見無駄な作業に見えますが、ピックガードに覆われた部分とそれ以外の部分の差を再現する為に必要な作業です。

Weather Check

ウエザーチェックの形状や細かさなどもご希望に沿って製作可能です。当店ではウエザーチェックの加工に刃物などを使わず、自然にクラックを起こさせます。そのため、ある程度木部の性格に依存することをご了承くださいませ。

木目だし加工

木部は年輪の層ごとに柔らかい部分と硬い部分に分かれています。これは季節の変化によるもの。ギターの塗装がはげ、長年のプレイで、木部がこすれると、柔らかい部分が先に劣化し削れてしまいます。これらの現象を再現するために、木目だし加工を行っております。家具などの様に平面で広い範囲に木目だしの加工を行うことは比較的簡単ですが、塗装のはがれた部分など限定的な部分に加工を行うためには高い技術と根気が必要となります。木目だし加工を行っていない、レリック加工は多く、手に取った時の質感が大きく異なります。

パーツの加工

金属パーツはそれぞれ分解して加工を行います。主な加工方法はサンドブラスト加工、ストーン加工、薬品による酸化加工、薬品を使わない酸化加工などがあり、ネジ部分など錆によって操作性に支障をきたすおそれがある部分については、お客様の声により、薬品による酸化を使わず加工を行っております。

プラスチックパーツについてはサンドブラスト加工、ストーン加工、汚れ加工を行い、使用感を再現しています。

レリック加工は塗装部分に着目しがちですが、パーツによって完成後の表情が一変するほど、重要な役割を持っています。

見えない部分のレリック加工

ネックを取り外したときの塗装の日焼け跡、ピックガードの跡や裏側、コントロールパーツの裏側、などの、分解をしなければ見えない部分にも丁寧に加工を行っています。

まとめ

最初は、私自身もレリック加工されたギターを見て、良いイメージを持つことができませんでした。しかし、レリック加工されたギターは私の頭の片隅に残り、徐々に意識するようになりました。当時少なかった本物を見るために行ったSHOPで、衝撃を受けました。「キズ=価値が下がる」と認識していた私の考えはそこで消え去りました。それには、高級感さえ感じられたのです。それ以来、レリック加工の研究を行うようになりました。

ichimonzi工房では、先駆けてレリック加工に取り組んで参りました成果として、多くの技術を取得することができました。また、経験とアイデアを生かし当店にしかできない加工を提供できるように、専心しております。下記の代表的な加工例をご覧くださいませ。

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